宗教について 〜 人の生と死を考える 注64

公開: 2023年3月23日

更新: 2023年5月19日

注64. 国家間の対立を解消する手段

国家間における対立は、外交交渉か、または戦争によって解決することが古くからの慣習でした。特に、外交交渉で合意が得られない時、国家にとって戦争は最終的な手段であると、今でも考えられています。しかし、第1次世界大戦から、飛躍的に進歩した武器の、人を殺す力によって、戦争の被害は、どんどん大きくなっています。第2次世界大戦末期に開発された、核兵器では、1発の爆弾で、10万人を超える市民を殺すほどの殺傷能力になりました。

そのことは、戦争が始まってしまえば、最悪の場合、戦争の当事国だけでなく、その近隣諸国へも被害が及ぶ危険性があることを意味しています。現代の国際社会では、2国間の問題を戦争によって解決することは、現実的に不可能になっています。しかし、政治家には、相手国との問題を話し合いで解決する、十分な能力が備わっていないのも事実です。これから、人類に必要なことの一つとして、意見の対立する相手と、意見が対立している事がらについて、話し合って妥協点を見出す能力を育てることがあります。

米国では、対立していることが明確な問題について、問題の内容を分析し、相互に対立する原因を把握し、何が妥協できる問題で、何は妥協できない問題なのかを明確にし、そこから相互に妥協できる合意を見つけ出すための研究も行われています。そのためには、交渉する者同士が、体面、社会的地位、家系、財力などの社会的特性に拘らず、合意締結の目的を理解したうえで、議論をする必要があります。それができなければ、合意を形成することはできません。

参考になる読み物

Fisher, R., Ury, W., and Bruce, P., "Getting to Yes," Penguin Books(2011)